子どもの声
日々の中で様々な表情を見せてくれる子どもたち。
喜怒哀楽を感じ、その思いを自分なりの表現で伝えてくれています。
今回は豊かな自然と異年齢の中で過ごすどろん子の子どもたちの
声とその背景を紹介したいと思います。
【なにみてるの?】
園庭に積まれた木材でトンネルを作っていた4.5才児たち。
それを側で見ていた1才児。
木材置き場へ向かい自分の背丈より高い木材に手を伸ばす。
なかなか取り出せない。その表情はとても真剣。
私はがんばれ〜と思いながら彼女を見ていた。
その私に気付き「なにみてるの?」と4才児の男の子が言った。
私の目線の先に気付くと同じ様に彼女を見ていた。
時間はかかったが無事に木材を取り出せた。
彼女の姿に2人で目を合わせて微笑んだ。
一人でやり遂げだ彼女の立派さは素直にすごい!と感じ、
言葉なくとも、私と彼が感じた事が同じだった事にも嬉しく思った。
【もってみたいから。】
公園から帰る仕度の中で砂場セットをバックに詰めていた私。
2才児の男の子が「これも」「どうぞ」と手伝い始めた。
全てを入れ終わると、
私の手からバックをひょいっと受け取り歩き出した。
大きめのバックにたっぷり入った砂場セット。
彼の体には重いし大きい。
「いいよー重いから持つよ?」
私の言葉を聞いても彼は歩き続ける。
「だいじょうぶ。もってみたいから。」
楽しい事ではないと思っていた荷物運びが
彼にとっては「挑戦してみたい事」だった。
【ね?うれしそうでしょ?】
「かくれんぼしよ!」と5才児の女の子。
「公園着いたらかくれんぼしようね!」と朝から約束をしていた。
そこへ「やりたーい!」と集まった2才児たち。
1、2、3…10!もういいかーい!と私が数えると誰も隠れていない‥。
「もういいよー!」と私のすぐ側で彼女が答える。
「かくれんぼじゃなかったの?」やりたかったはずなのにと私は聞いた。
「みんなはおにごっこがすきでしょ?はやくー!」と彼女は走りだす。
みんなを追いかけ彼女もタッチした時、走り回る2才児たちを見ながら
「ね?うれしそうでしょ?」と言った。
そう話す彼女の笑顔も、とても嬉しそうだった。
【まっててね?】
砂場で遊んでいた二人の2才児。
「ブランコしようよ!」「いいよ!」と駆け出した。
「‥まって!」一人が靴を履くのに手間取っている。
気付かず走り続けるもう一人。
「まってよー!」の声に立ち止まり振り返る。
「待っててね?」と言いながら必死に履くその姿を見てこくんとうなずく。
真剣な様子を無言で見つめる。
「おまたせ!」と走り始めた彼を見てにこっと笑ってブランコへ向かって行った。
「一緒」が嬉しいから「待つ」時間も嬉しいんだなぁと感じた。
【おかあさんにしらせなきゃ!】
BB弾探しに夢中な3才児。
進んで行くと落ち葉の中に靴下を見つけた。
「あ!わたしのくつした!」嬉しそうに手に取るが破けていた。
前回、忘れてしまった靴下は動物か、風か‥何かで破れてしまっていた。
「あーあ。これじゃはけない‥」「せっかくかってくれたのに‥」
悲しそうにしょんぼりとする。
しばらく黙っていた彼女は「おさあさんにしらせなきゃ!」とだけつぶやき
靴下をポケットへ押し込んだ。
私の靴下。大切な靴下。お母さんが買ってくれた靴下。大好きなお母さん。
「物」の向こうの「人」への思いを感じた。
【んー‥ぼうしー‥】
散歩中に、手をつなぎたくない!と手を離した2才児。被っていた帽子をポイっと
投げ捨て怒りをアピール。「帽子、どうするの?」
「‥もういらない!」そうか。とそのまま進んだ。
すると1台の車が通り過ぎ慌てて振り返る彼。「あー!ぼうしー!」潰されてしまうと
慌てるが、「いらない」と決めて進むを選んだ。取りに戻れない事に納得出来ずに
立ち尽くす。
「んー‥ぼうしー‥」泣きそうな表情で呟いた。
すると後から歩いてきた大きい子たちが拾って持ってきてくれた。
嬉しそうに帽子を受け取る彼。
この瞬間から彼の中で大切な帽子になったのだろう。忘れずに被って
行き忘れずに持ち帰っている。自分が感じて自分で気づく事って
とても大きいと感じた。
【おふとんおわったよ。】
「公園行かないの。」と園で過ごす事が増えてきた3才児。
午睡用に布団を敷き始めたスタッフに気付くと自ら手伝う。
しばらくしてスタッフが他の仕事へ移った後も続ける彼女。
全員分を敷き終え、すっきりとした表情で
「おふとんおわったよ。」と和室から出てきた彼女。
「はいよー」と返事をするスタッフ。
やりたい事って“あそぶ”だけじゃない。
お手伝いをして褒められたかった訳でもない。
彼女のすっきりとした表情から
本当の意味での充実した時を過ごせているんだなぁと感じた。