シュワッチ!
正義のミカタ!ウルトラマンがくれた学び
今回は2才児の男の子と相棒のウルトラマンのエピソードをご紹介します。
と、その前に・・・
私自身3児の親として、また保育園のスタッフとして普段から子どもたちと向き合う毎日ですが、子どもたちのまさかの反応に驚く日々です。こちらの対応に対してこうなるかな?こう言うかな?という想定を、子どもたちはあっさりと超えてきます。「喜ぶかなー」「笑顔になるかなー」と思っても「あれ?無反応だわ…」なんて事も。
小さな体でたくさんの事を考えている子どもたち。「困った」「なんでだ」「どうしよう」の連続です。“どろんこの森”では、その時一緒に困って一緒に考えて、少しの手助けをすることで、子どもが自分で答えを見つけることを大切にしています。今回はそんなエピソードです。
主人公の男の子は最近アクシデントが重なったのか、ここ何日か登園時に「やだ!おうちかえる~!」と泣いていました。
ところがある日「みてー!じーじに買ってもらったのー!」とウルトラマンの人形を握りしめて登園してきた彼は、昨日までの泣きじゃくっていた姿から一変して、わくわくキラキラしていました。
嬉しくて嬉しくてウルトラマンをスタッフや子どもたちに自慢気にお披露目し、「次の子が早く来ないかな…」と玄関前をウロウロしている彼の姿に、スタッフも思わず笑顔に。
上機嫌で始まった彼の一日、その日は公園へ出かけました。もちろん、彼の手にはずっと大事なウルトラマンが握られています。
膝の上にウルトラマンを乗せ、滑り台やブランコにチャレンジしてはポトリと落としたり、土管の上から砂場へ一緒にダイブしたり。砂の中にウルトラマンを埋めて「いまたすけるからー!」と砂を掘って救出したり…
そんな彼とウルトラマンはすでに“相棒”でした。彼にとってウルトラマンは、単なるお気に入りアイテムなどではなく、今日一日を一緒に過ごしたい大切な友だちだったのです。
たくさん遊んだ上に心も相当満たされていたのか、ランチはいつも以上にもりもり食べ、お昼寝も一緒に並んで寝ていました。
お昼寝から起きた彼が「ねえ、ウルトラマンよごれちゃったー。どうすればいいかなー。」と私のところへ。
見てみると塗装が剥げている箇所や傷がついてる箇所がいくつもあります。「本当だね。でもこれは汚れじゃなくて、削れて傷がついてるんだよ。だから修理屋さんに持って行かないと直らないと思うな。」と伝えましたが、それでも「ここが汚い。ここが黒いの。」と納得いかない様子。
あれだけ一緒に遊べばこうなるよな…と思いながらも、ウェットティッシュでごしごし拭いたり、お湯と石鹸で洗ったりと試しましたが、やはり元に戻りません‥。
しくしく悲しくなるかなあと思っていると「まあいいか!ありがと!」と何か吹っ切れたように部屋へ戻って行きました。意外とさっぱりとした彼の反応に少し驚きました。
子どもは、しばしば大人とは全く違う視点で捉えていて、2才の彼でも、たとえ0才児でも、何気ないこちらの一言をどう捉えるのか、それはその時その子でみんな違います。この時の彼は、私が想像するよりもずっと早く自分自身の中で整理できていたようです。
その日の夕方、彼はまたウルトラマンを持って砂場へやってきましたが、私のところへ駆け寄ると「これ、ポッケに入れといて!」と私のエプロンのポケットに押し込んできました。「一緒に遊ばないの?」と聞くと「削れたらやだから!おうちで遊ぶ!」とのこと。2歳児でも今日一日できちんと経験として獲得していたのです。
この日の朝、公園へ持っていこうとする彼にもし「せっかく買ってもらった人形が汚れちゃうから置いていきなよ」とお節介でもしていたら、ウルトラマンと遊びたい一心の彼が「そうだね!」なんて気持ちよく首を縦に振るわけもなく、彼はこの実体験を通して学ぶこともなかったはずです。
保育園に私物を持ってくる、というのは世間一般ではあまり無いことかもしれません。ルール・決まりだからと大人は言いたくなるし、もちろんルールや決まりを守る事も大切です。しかしそれを守らせる事だけが大人の役目なのでしょうか。
彼が自分で選択した事で起きた結果を、自分で見て感じて「じゃあどうしよう」と考える時間、それはとっても大切な事で子どもにとって大きな経験です。
その繰り返しで経験を積み重ね、「自分はこうしたい」「こう思う」「それはいやだ」「これならいい」と自分の気持ちを自分自身が理解できるようになると自分にストンと入る答えを見つけるのはもう楽勝です。
そのときの、ほんの少しのサポート(見守ること)が私たち大人の役割なのかなと感じます。
大人が何でも主導で道を示すのでは無く、大人が見守る中で乳幼児期にチャレンジを沢山することで、小学校の子ども社会の中でも自分の芯をしっかりと持って生活することができ、それは大人になって社会に出ていく時にも、その根付いた芯が自分自身をぶれずに支える土台になるのです。
買ってもらってたった一日で全身傷がついてしまったウルトラマン人形。身をもって彼に大切な学びと、満たされた時間、そしてそばで見守る私にもいくつも気づきをくれるために・・・
光の国から僕らの為に来たぞ我らのウルトラマン♪シュワッチ!!